コラム4


第4回コラム「ヒブワクチンと細菌性髄膜炎」(2010.2.25)

小児がかかると怖い病気の一つに細菌性髄膜炎があります。脳や脊髄を覆っている髄膜に細菌が感染して炎症を引き起こすもので、日本では毎年600人以上の子供が罹患し、そのうち30人前後が死亡、150人前後に脳障害やてんかん、発育障害などの後遺症が残っていると推定されます。この細菌性髄膜炎の原因の約6割がHib菌(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)によるものです。
初期症状は発熱や嘔吐などで風邪との類似点が多く、また近年、抗菌薬への耐性が強くなっていることもあって、早期の診断、治療が難しくなっています。そのため、ワクチンによる予防の必要性が高まってきているのです。

欧米では1987年頃からヒブワクチン接種が始められ、それ以降、Hib菌が原因の感染症は大幅に減り、予防接種の効果が表れています。日本では2007年1月、厚生労働省の承認を受け、現在、公費の予防接種プログラムには含まれませんが、自費での接種が行われています。
ヒブワクチンは生後2カ月からの接種が可能で、できるだけ早い時期の接種が勧められています。細菌性髄膜炎の患者は0歳が53%、0~1歳が70%以上で、生後9カ月が最も多いという報告があるためです。生後6カ月までにはワクチン接種し、免疫を獲得しておくと安心です。

ヒブ感染症の他にもワクチンによって防げる病気は多くあります。ワクチンで防げる病気のことをVaccine Preventable Diseases(略VPD)と言いますが、日本では欧米と比べると子供たちがVPDに罹って健康を損なうケースが多いようです。ワクチン接種率の低さや日本ではまだ使用が認められていないワクチンがあることがその理由です。
VPDの健康被害を減らしていくために、予防接種の大切さを一般の方々に周知していくことも医療機関の担う役割の一つと考えています。

当院でもヒブワクチン接種をご予約制で承っております。
ご希望の方はお問い合わせください。
≪ワクチン・予防接種などで防げる主な病気≫
麻疹           おたふくかぜ
結核           ジフテリア
水痘           日本脳炎
破傷風          百日ぜき
風疹           ポリオ
ヒブ感染症        インフルエンザ
肺炎球菌感染症      A型肝炎 B型肝炎
黄熱病          狂犬病
子宮頸がん  
      
〈出典:医師会情報誌「元気がいいね」・細菌製剤協会「予防接種に関するQ&A集」